時計兎
「だからどっか行ってよ!!」


少女は助走をつけ、久遠を突き飛ばそうとした。

その勢いは全力を尽くしたものだったが、彼はそのか細い腕に少しも動じなかった。



――何だこの娘



訝しがりながらも、はっと気付く。


少女は少し身震いをしており、長い間外にいたのだろう、頬が赤く上気していた。
風邪をひいたのかもしれない。


――ハア

息が白い


羽織っていたコートをまるで眠っている子供を起こさぬように、そっと彼女にかけた。
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