時計兎
ステーキ
近くのファミリーレストランに場を移す。

外は寒かった。
暖を取るには久遠の部屋に行くのが一番近かったが、あいにくそこには食べるものが何もなかった。



二人専用の席に案内され、久遠と少女は席についた。


久遠が話を切り出す。


「先ず、名前は?」
少女はコートを脱ぎながら陽気に答える。
「彩夏だよ」

肝心なのは住所の特定になるかもしれない苗字なのだが。そんな考えを巡らす最中。


「ご注文をどうぞ〜」


欝陶しい店員が水を出しながら聞いてくる。


「私、ステーキ!」

即答。

「僕はコーヒーで」


「かしこまりました〜」

店員はそそくさと店内の奥へ消えた。



店員が水を差したためか、一時沈黙が流れる。


――早くこの子を家に帰そう


水を一気に飲み干し、沈黙打開の勢いをつけた。
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