時計兎
コーヒーの苦い香りで頭が冴えたのか、平静を取り戻した。



とりあえず電話番号や住所ぐらいは聞き出そう。


冷静な思考がそう告げた。



さっきも聞き出そうとしたのだが邪魔が入った。


近くに邪魔な店員がいないことを確認し、尋ねた。



「住所は?」
「知らない」

「電話番号は?」
「わからない」

「来た方角」
「存じ上げておりません」


何故急に謙譲語


じゃあ苗字は

「それはわかるよ。
た・ち・ば・な、だよ」



た・ち・ば・な




橘?




――え

とんでもない拾いものをしたものだ




ここらでは知る人ぞ知る




大豪邸の娘さんとは。
< 30 / 73 >

この作品をシェア

pagetop