時計兎
とても危ない状況にいることに久遠は気付き、壊れかけのブリキのおもちゃのように手足が同時に出て歩く。
明らかに緊張、今にも転びそうだ。
「ねぇ…悠君……」
彩夏の方を向く。
カタカタと首が音を立てている。さながらおもちゃのようだ。
でもどうして名前を。しかも下。
「コートに学生証が入ってて」
見たんですか
上目づかい、見捨てないでと哀願するように静かに言った。
「一晩泊めて…」
立ち尽くすブリキのおもちゃからはネジが弾け、飛ぶ音がした。