時計兎
序章(2)
――血


少女は転びそうになりながらも滑りから必死に立ち上がり、ドアノブに手をかける。









――開かない


全力で拳をドアにたたき付けた。


「出して!
ここから出してよ!!」



外からの反応はない。




拳に付いていた血が扉にも付く。

息が荒くなる。

頬に付着した血が嫌な速度で首へ伝う。


もはや赤い浴衣となったその右袖で顔を拭う。

見えはしないが吐き気がした。


――落ち着くんだ





一度冷静になり、ドアに背中をもたれる。




――ここには私に危害を与えるようなものはない。

大丈夫

私は安全。





とにかく闇が濃い





――そうだ、カーテンを開けて、明かりの確保をしよう



いや

それより窓から出ればいい





背中をドアから離そうとした瞬間








カチ




何やら音がした
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