さよなら、いつか。①―幕末新選組伝―
かんざし
「おいっ!起きろよ糞女!」
意識が朦朧とする。
「いつまでもそんな無防備で寝てっと襲っちまうぞー?」
もう朝?
早く荷物をつめて学校に行かないと遅刻しちゃう。
もうすぐいつものように翼が迎えに来てくれるだろうし早く起きなきゃ。
「翼待ってねぇ・・・。」
抱き枕のにゃあちゃんをぎゅっと抱き締める。
にゃあちゃんは、中学のころ翼と買い物に出掛けたとき一目惚れした、長細いビーズクッション。
にゃあちゃんは相変わらずやわらか・・・。
あれ?
やわらかくない。
というか寧ろかたい。
あれっ?と思って重い瞼をゆっくりと開く。
「きゃあっ!変態!」
私がにゃあちゃんだと思って抱きしめていたのは顔を真っ赤に染めて硬直する原田さんだった。
あの日が、丞に襲われかけたあの夜がフラッシュバックしてくる。
ま、また襲われる!?
バッと原田さんを見る。
私の予想とは裏腹に、原田さんは気が動転しているみたいだった。
全く動こうとしないから、布団からぴょんと飛び出す。
最低最低最低!
人の布団に潜り込むなんて!
「原田さんなんて大嫌い!」
まだ硬直している原田さんをばしっと叩く。
──ピクッ
それで意識が戻ったように慌てて布団から出てきて、なぜかちょこんと私の前に正座した。