さよなら、いつか。①―幕末新選組伝―
「はああ!!」
「軽い軽い!」
稽古場に着くと、いきなり土方さんの怒鳴り声が飛んできた。
「凄い…。」
稽古の風景を見るのは初めてだったけど、まさかここまでとは思っていなかった。
稽古場の隅を見ると過呼吸のようになって倒れている人も何人かいる。
「試しに打ち込んでみないかい?」
「えっ!」
沖田さんは私の瞳を捕えて離さない。
「…お願いします。」
沖田さんの強い瞳に押されて、断ることができなかった。
「辰之助!お前相手しろ!」
沖田さんは、一番近くで稽古をしていた人に声を掛けた。
辰之助さんは驚いた様子でこちらに振り返った。
「俺っすか?」
「そう、お前だ。」
辰之助さんは、面倒くさいとでもいうようにゆっくりと私の前に歩いてきた。
「よろしくお願いします。」
時間を取らせてしまったこと、申し訳ないなと思いながら深く頭を下げた。
「こちらこそ。」
辰之助さんはだるそうにぺこっと頭を下げた。
そんなあからさまにされるとこっちが傷つくんですけど…。