さよなら、いつか。①―幕末新選組伝―
「始めっ!」
土方さんの声が静まり返った稽古場に響いた。
「・・・・・」
初めて手合わせする相手だし、様子見にでようと思ったけれど辰之助さんも一向に手を出そうとしない。
ここは、私から攻めるしかない。
「はああ!」
思い切り竹刀を振り上げた。
私を見て辰之助さんもかかってきた。
「一本!」
───カラン
竹刀が床に転がった。
「・・・嘘だろ?」
全員が呆気にとられた。
私と、沖田さんを除いて。
「…一之瀬あずみの勝利。」
土方さんは小さな声で判定を下した。