さよなら、いつか。①―幕末新選組伝―
芹沢さんは槍を構えた藩士たちに哄笑しながら進み出て来て、ゆっくりと口を開いた。
「ここを通せ。」
氷のように冷たい声。
会津藩兵が槍を突きつけると、芹沢さんは鉄扇でその槍先を悠々と煽いで笑った。
どうしてこの状況で笑っていられるんだろう。
その圧倒的なオーラに思わず生唾を飲んだ。
「と、通せません!」
圧倒的に藩士が圧されている。
「不審者のことを通すわけにはいかぬ!」
藩士は怯えながらも、強く言い返してきた。
それにしても不審者だなんて、この藩士のひとは壬生浪士のことを知らないのだろうか?
「おい、そいつらは壬生浪士組だ!早く通せ!」
会津藩士たちの背後から、軍奉行らしき人が駆けつけてきた。
藩士たちがしぶしぶと警備を離れると、芹沢さんはその間を悠々と通って行った。