さよなら、いつか。①―幕末新選組伝―
高台寺は立派なお寺だった。
石段を上ると、左右には果てが見えない白壁。
入口も、茶瓦で出来た屋根は目を見張る。
比べるつもりはないけれど、前川邸とはえらく違う。
ここに、翼がいるんだ。
石段を一歩上がる度に、緊張が増す。
私がここに残りたい、と言ったら、翼はなんて言うかしら。
裏切り者?
酷い女、と?
何を言われてもしょうがないけれど。
私は、全てを捨てたのだから。
家族も、友人も、私に関わってきたもの全てを。
本当に申し訳ないと思ってる。
17年間育ててきてくれたお母さん、お父さん。
ずっと仲良くしてくれていた、友達みんな。
貴方たちの事を、忘れた訳じゃない。
今でも大切に思ってる。
ただ、どうしても手放したくないものが出来ただけ。