さよなら、いつか。①―幕末新選組伝―
本当に何この人!
ぶんぶんと身をひねっても全く逃れられない。
「なんや、お前ミミズみたいやな。」
がーん。
挙げ句の果てにはこの言われよう。
でも、私はこの一瞬を逃さなかった。
「あ、おい!」
ははっと丞が笑った瞬間に、抑えられていた両手をぱっと放した。
チャンスだ!
すくっと立ち上がって部屋の襖を開く。
丞を振り返って見る余裕なんて今の私には存在しない。
「待てや!」
待てと言われて待つ馬鹿がどこにいるのよ!
と思いながら廊下を走る。