Vrai Amour ~妃奈の場合~
「ちょっと寄りたいところがあるんだけど、いい?」

帰り道、車の中で恒輝さんはそう言った。


どこだろう?


今日はこのままうちに向かって、正式に入籍するって話をするはずだったと思うんだけど・・・


向かった先は見たことのないマンションだった。


「はい」

車を降りたそのあとに、手のひらにぽんと乗せられた鍵。

「え?」

「僕たちが一緒に暮らす家だよ」

私はてっきり恒輝さんのいるマンションで一緒に暮らすんだと思っていたから、突然のことで言葉が出ない。

「まだ家具なんかは揃っていないんだ。妃奈と一緒に選ぼうと思ってね」

そう言って、恒輝さんのあとをついていく。

エレベーターを降りると、そこにはドアがひとつしかなかった。
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