Vrai Amour ~妃奈の場合~

不思議に思って恒輝さんの顔を見上げると、くすっと笑って恒輝さんが言った。




「この階はテラスがついているから、僕たちだけだよ」




中に入ると、まだ新しい部屋の匂いがする。



家具はほとんどなく、からっぽの部屋ばかりだった。





奥に入っていくと、恒輝さんが日当たりのいい部屋に入って言った。


「ここは僕たち二人の寝室」


まだシーツもかかっていない大きなベットの奥には

テラスにも出られる大きな窓があって、夜景もきれいなんだろうなぁと思う。

すると、ぐいっと腰を抱き寄せられてそのまま恒輝さんの胸に押し付けられた。


「・・・もう、どこにも行かないよね?」


ぎゅっと強く抱き寄せられ、恒輝さんも不安だったんだなと思い知る。

それと同時にあったかいものが胸の中にこみ上げてきた。
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