Vrai Amour ~妃奈の場合~
私は反射的に携帯を開き、名前を確認した。











『西園寺恒輝』






と表示されたディスプレイに思わず、ベットの上で正座して通話ボタンを押した。



「も、もしもし」

『・・・もしもし、西園寺と申しますが・・・』

受話器から聞こえる恒輝さんの声は、耳に甘く響いてくすぐったい。

『あの・・・妃奈さん、ですよね?』

なかなか答えない私に恒輝さんは不安そうに聞いた。

「あ、はいっ。妃奈です」

『良かったー。間違えたかと思いました』

電話の向こうで、ほっと胸をなでおろしている恒輝さんが思い浮かぶ。

私は思わずくすくすと笑ってしまった。

「何か御用ですか?」

そう答えると、少し沈黙の時間が続く。
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