Vrai Amour ~咲子の場合~
「会いたいの」
私は言ってはいけない言葉を言ってしまった。
でも、もう止められない。
『で、でももう遅いし、僕は・・・』
と断る駿に「会いに来て、待ってる」と無理やり押し付けて一方的に電話を切った。
それからほどなくして、玄関の脇にある部屋の窓がノックされた。
ここはお屋敷の離れにある部屋なので、両親や執事は常駐していない。
0時を過ぎたら、執事が施錠をして出て行くはずだ。
私はそっと部屋を抜け出し、玄関のドアを開ける。
顔を出した駿はしばらく会わないうちに、すっかり男らしくなっていた。
熱くなっている頬に気づかれないように、そっと髪で隠す。
「駿くん」
私が手招をすると、駿はするりとドアの中に身体を滑り込ませた。
周りを確認してから二人してそろりそろりと足音を殺して歩く。
無事部屋に入ってドアを閉めると、ほっと一息つく。
駿も同じだったようで肩をなでおろしたのが見えた。