Vrai Amour ~咲子の場合~
「ごめんね・・・こんな時間に」

そう言ってうつむいたところで、はっとした。

「あっ」

靴音が近づいてくる。

私は慌てて駿くんの背中を押すとウォークインクローゼットに押し込めるようにして扉を閉めた。

「お嬢様?どうかなさいましたか?」

ノックもなく部屋のドアを開けて顔を出したのは、執事の秋山だ。

「いえ、何も?何かあったの?」

私は駿くんが見つからないように、いつもの笑顔でそう答えた。

「それなら良いのですが、どなたかいらっしゃったような気がしたもので・・・」

「誰も来ないわよ」

サラリとそう言って交わすと、秋山がドアを閉じながら言った。

「左様ですか。それでは明日はお時間が早いですので、お早めにおやすみくださいませ」

「ええ、おやすみなさい、秋山」

ベットに入るふりをすると、秋山はゆっくりと礼をしてドアを閉めた。
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