Vrai Amour ~咲子の場合~
それからしばらくすると、偶然にも九条家から連絡があった。

嫌な予感はしたが、やはり「秋緒と別れて欲しい」とのことだった。

私は10年以上も秋緒と関係を持ち続けてしまったことを謝罪した。

仕事もさせず、甘やかしてしまったのも私だ。

どう処断されようと、甘んじて受けるつもりで対面したのだが

九条氏から言われた言葉はまったく違うものだった。





「好きな人と幸せにおなりなさい」





その優しい言葉に、ぼろぼろと涙をこぼした。



秋緒は近くご友人のお孫さんとお見合いをさせたいと言われ、私も承諾した。



同時に、私自身も経営からは身を引くことにして、ようやく留学から帰ってきた恵に継がせることを覚悟した。
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