Vrai Amour ~咲子の場合~
しばらくして恵にすべてを引き継ぐと、私は秋緒とのマンションで休養をとることになった。
しばらくは一人でいたいと思った。
あの日以来、朝比奈への思いがどんどんと膨らんできている。
そのことについても自分の中で気持ちを整理したいと思った。
それに、ここ数年は胃を痛めることが多く、どうにも体調が良くなかったのだ。
「・・・っ」
キリキリと絞り上げられるような胃の痛み。
それはだんだんと激しくなり、ソファーに座っていても耐えられなくなってきた。
「朝比奈・・・・」
声に出してから気づく。
今日は少し用事があるとかで、朝比奈はお屋敷に戻っていてここにはいなかった。
「・・っ・・・う・・・」
その間にも胃の痛みは増し、冷や汗が噴出し、呼吸もうまくできなくなった。
「誰、か・・・っ・・・」
電話をしようと携帯に手を伸ばしたが、次第に意識は薄れ私は床に転がった。