Vrai Amour ~咲子の場合~
「・・・私もすべてを投げ打つ勇気はなかったから・・・ごめんなさい」

優しく頬を撫でてくれる駿の手のひらにキスをする。

「・・・もう二度と離さないよ」

「うん・・・私も」

ゆっくりと駿が動き始め、私を抱き起こすと耳元で「愛してる」と囁いた。

彼の声で初めて聴くその言葉は、耳の中で甘く響いて体が震えた。

何度も何度もその言葉を繰り返し、30年の想いをすべてぶつけるように駿は私の中に熱を注ぎ込んだ。





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