Vrai Amour ~斗真の場合~
俺は慌てて準備室から飛び出すと男子トイレに飛び込み、慌てて手を洗った。

何度も何度も石鹸をつけて、痛くなるほど擦った。

そして、最後に冷たい水で顔を洗うと、ようやく少し落ち着けた気がした。



「はぁ・・はぁ・・・」




窓の外はすっかり暗くなっている。

ポケットに入れっぱなしの携帯を取り出すと、何回か着信があった。

もちろん有絵からだ。

慌てて折り返したが、一向に出る気配がない。

俺は仕方なく、タクシーを捕まえ家へと急いだ。



「ただいま、有絵?」


鍵を開けて玄関に入るが、出迎えはない。

返事もないのは何かおかしい。


「・・・有絵?」


慌てて靴を脱いでリビングへと急ぐと、そこには信じられない光景が広がっていた。
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