Vrai Amour ~斗真の場合~
次の日、俺は美空の自宅へと向かった。

初めて見た美空の家は驚くほど大きくて、少し躊躇してしまう。

結婚披露宴も敷地内で行われるとあって、周辺の警備も厳重でどうやらこっそりと中に入ることは難しそうだ。

案内状を出せばすんなり入れるだろうが、それであいつらに見つかったら意味がない。

「あの・・・」

一度車に戻ろうとしたとき、不意に後ろから声をかけられた。

「・・・はい?」

振り向くと、そこには燕尾服を着た執事が立っていた。

「もしかして、美空お嬢様の・・・」

にっこりと微笑む執事は、朝比奈といって代々桐島家に仕えている執事らしい。

「何か出来ることがありましたら・・・」

執事は俺が言いたいことを見透かしているようだ。

「では、これを美空さんに・・・」

そう言って、手に握っていた封筒を渡し、渡せばわかると付け足した。

「かしこまりました」

朝比奈さんは深々とおじぎをすると、ごった返している入り口を抜けすぐにお屋敷に入っていった。

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