瞳の中の彼
それからあっという間にお昼休み。
太一さんに連れられてたまり場の教室へ移動中。
廊下を歩いていると上級生の女の人達から冷ややかな視線をあびる。
「あんなの気にしなくていいですよ。」
そう太一さんは言うけど…
殺気立った視線はやっぱり怖い…
「太一さん、暴走族をやってた兄はどんな感じでした?」
「感じ?…ん、」
私、変な質問したかな? 太一さん困ってる…
「俺らにとっては、雲の上の存在って感じかな。 喧嘩も強くて、俺ら下っ端の面倒もよく見てくれてたし。
チームのこともだけど、チームの人間も大事にしていた人でしたよ。」
「そうなの? 私そんなこと全然知らなくて…。暴走族に入っていることすら知らなかったの。」
「それはですね、葵さんのこと守るためですよ。族のリーダーとなれば兄妹や彼女が狙われやすいんです。
葵さんの存在を知ってたっていうのは幹部でも数人の人間しか知りませんでしたよ。」
そうだったの……。だから りー兄は家に帰ってこなかったのかな?
「太一さんは知ってたの?私のこと」
「えっ…俺ッスか? 実は 俺の兄貴が幹部で理玖さんと仲良かったから話だけは聞いてましたけど…。」
「お兄さんも暴走族だったの?」
「兄貴に憧れて俺もはいったんですよ。夜みんなで単車ころがしたり騒いだりしたりして。かっこいいじゃないっすか。」
……私には理解出来ないなぁ。