漆黒の黒般若
やっと仕事が終わった頃にはもう太陽が真上を通過し西に傾いていた


そして部屋に戻るも楠葉の姿はなく斎藤からはため息が漏れる


「早く伝えてやりたかったんだが…、坂下は何処にいったんだ?」


朝は静かだった部屋も昼間となると隊士達の稽古の声や外で遊ぶ子供の声が聞こえる


仕方なく部屋で本を引っ張り出して彼女を待ったがなかなか帰ってくる気配がない



何処にいったんだ?


考える斎藤の頭に原田がいっていた添い寝の事が思い出される



まさか…!?


そうなると集中して本など読める状態ではなかった

頭に浮かぶのは総司と楠葉が一緒に床にはいるところ


しばらくその事ばかりが頭に浮かび消しては現れ、消しては現れを繰り返す


もういてもたってもいられなくなった斎藤は総司の部屋に向かおうとしたがはっとして足を止める



俺は何をしようとしているのだ


道場の事など坂下が帰ってきたら伝えればいいことではないか


坂下のことになるとだめだな俺は…


頬を掻きながらもといた位置に戻り本を読み始めるがやはり集中などできるはずもなく同じページのまま時間ばかりが過ぎていった



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