漆黒の黒般若
騒がしかった昼間に比べ日が沈み始めた今は静かになった

ガラッ

「あっ」


坂下は俺を見るなり気まずそうな顔になる


そしてこちらの様子を伺いながら反対側の壁に寄りかかった


何処に行ってたんだ?
総司のところか?
添い寝はどうなった?

聞きたいことはたくさんあった
しかし自分の口から出てきた言葉は


「楽しかったか?」

「今朝のやつだ」

「あの時のあんたはとても楽しそうだった」


なぜこんな事を言ったのかはじぶんでも謎だった


いざ彼女が目の前にくると言いたいことが言えなくなる


困った顔を見ると笑顔にしてやりたくなる


そんな自分の気持ちに首を傾げる


しかし今日のような事がまたあると困る

ここは心を鬼にして怒らなくては


そう思って坂下を叱ったのだがさっきまでショボンとしていた彼女が予想外の反応をした


「だって斎藤さん、あたしが話しかけても返事してくれなかったじゃないですか!添い寝のことも知ってたなら止めてくれればよかったじゃないですか!あとから怒るなんて酷いです」


「斎藤さんだってあたしのご主人様のくせに部屋にも全然帰ってこないですし、斎藤さんこそあたしのことほったらかしじゃないですかぁ!」


あまりのけんまくについ茫然としてしまう



真っ赤になって涙を浮かべる彼女がとても愛しく思えた


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