漆黒の黒般若
「それで誕生日会はどうします?」


「それはもちろん島原でパァッと」


「え〜、それは佐之さんが行きたいだけでしょ?だいたい楠葉はああいう騒がしいところは駄目だろ?」


「えっ?あ、はい」


「楠葉ちゃん乗り気じゃないね?どうしたの?」


「そんなことないですよ!とっても楽しみです。でも…」


「「でも?」」


「誕生日会なんて久々で…。少し昔のことを思い出しちゃいました」


「楠葉さん…」


「平気っていったら嘘になりますがあたしはここにいて今幸せですから」


本当のことを言ったのだが、我ながらなんだか恥ずかしいことをいった気がして顔が赤くなる


“幸せ”なんて呑気なことをいってしまって恐る恐る顔を上げる



すると4人は目をぱちくりさせて驚いていた


「楠葉、幸せならいつまでもここにいていいんだぜ」

「だなっ。佐之さんの言う通りだ」


「そうですよ。楠葉さん」

「に、してもまさか楠葉ちゃんの口から幸せ〜なんて言葉が出るなんて思っても見なかったよ」


「最近はここに来たときのあの暗い雰囲気もなくなったよな」


「えっ?!あたしそんなに暗かったですか?」


「うん、かなりね。でも明るくなってきてよかったよね」


ここに来たばかりの時はこの人たちを疑い、敵と決め込んで心を開かずにいた

しかしこの半年ですっかり楠葉は壬生浪士組になじむことができた


それは黒般若として捕らえられてきたにも関わらず楠葉によくしてくれた浪士組の人達のお陰だと感じていた


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