漆黒の黒般若
最近は帰れば坂下が笑顔で待っていてくれる


「斎藤さんお帰りなさい」

たいした家庭も知らずに育った俺にとってその言葉は疲れた体に癒しを与えた


今日は少し遅くなってしまったが坂下は起きているだろうか?


いや、あいつは俺の小姓なんだ
主人が帰るまでは起きているだろう


一人ぶつぶつ呟いているともう部屋の前だった


しかし、部屋に灯りはともっていない

「寝てしまったのか…」


残念な気持ちになりながら襖を開けると暗闇の中で人が倒れている


「坂下っ!」


急いで駆け寄るとすーすーと規則正しい寝息が聞こえる


「寝ているのか…」


ほっと胸を撫で下ろしながらも彼女の格好に違和感を覚えた


確か、セーラー服という坂下の時代の着物のはず

しかし何故それを着ているんだ?



布団も敷かずに畳に倒れこむように寝ている楠葉の顔を眺める


あどけなく開いた口元がきれいな顔を幼く見せる


「こいつのことだ。どうせ、また1人で悩んでいたのだろう…。馬鹿なやつだ」

そう言うと立ち上がり布団を敷いてやった


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