漆黒の黒般若
「泣きながら帰って、主人にもう行きたくないって頼んだの。

でも殴られちゃってね…

たまにあるのよね」


お梅さんは笑いながら着物の裾をめくった

しかし笑うお梅さんの白い肌には青紫の痣がたくさんある


「あたしに居場所なんてなかったんだよ…

どこにもね

嫌がるあたしを殴って次の日も主人は芹沢のところに向かわせた

でも会うのが怖くて怖くて
またあんな思いをするならいっそのこと…
って思って橋から身を投げようとしたとき誰かに抱き抱えられて


死なせてって叫ぶあたしを押さえ込んだ手には見覚えがあった

振り向くと芹沢だったよ」

「お梅さん…」

自虐的な笑みについ声がこぼれる


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