漆黒の黒般若
「しっかりしろ!坂下っ。あんなところで泣いていたら目立つだろ!ここにいられなくな「知ってたんですか…」


斎藤の言葉は楠葉によってとめられる


「知ってたんですか?!斎藤さんは。芹沢さん達が殺されるって知ってたんですか?」


俺の着物に掴みかかって怒鳴る坂下は震えている


「あぁ、知ってた…」


その時坂下から平手打ちがとんできた


バチンッ


楠葉に殴られた斎藤はうつむく


「なんで…、なんでお梅さん達は死ななくちゃいけなかったんですか?!斎藤さん達は仲間じゃないんですか!あたしには…、あたしには理解できません。ここの人達は贅沢です…、大切な人を失うことの悲しみがどれ程苦しいか…。なのにそんな命を無駄に消してしまうなんて!馬鹿です!大馬鹿者です!!」



「すまない…」



楠葉にまたさきほどの光景がよみがえる


2人の血で赤く染まった畳に転がる2つの死体


仰向けに倒れていた芹沢さんの胸元には刀で斬った痕が残っていた


そしてその隣にはお梅さんが寄り添うように倒れていた


彼女は心なしか笑っていたように思える


もしかしたら最後に愛する人と逝けて幸せだったのではないのだろうか


しかしやはりまだ死にたくはなかった筈だ


うずくまる楠葉に斎藤が近づく

震える肩に触れた斎藤の手ははじかれる


「坂下…すまない、しかしこれだけはわかってくれ。俺たちはあくまでも大将は近藤さんだと思っている。あの人はこれから京をよくするためには欠かせない人物だ。だからそのためにもそれを邪魔する者は誰であろうと斬る。それが俺たちの仕事だ。あんたには贅沢な考えかもしれない。しかし俺たちはその考えで皆動いているんだ…」



そういうと斎藤は部屋を出ていった


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