漆黒の黒般若
虚ろな目は物事をうつすことはなくまた消えていった大切な人の面影を探す


あの時目の合った沖田さんはどんな気持ちだったのだろう…



大切な人を殺したのは大切な人達…



そういえば斎藤さんが言っていた


「己の信念のためなら粛正もいとわない」と…


それが斎藤さんの決めた道なの?



斎藤さんは何処に行ってしまったのだろう…



また大切な人はあたしの元を去って行くのだろうか…

理由もなく淋しさと不安がドッとおしよせてくる


斎藤さんも居なくなっちゃうの?


目の前には斎藤さんが離れていく幻が見えてきた


いつもの楠葉ならそれが幻だということはわかるのだが精神的に追い詰められている今の彼女にその見極めは難しく、本物だと思い込んでしまう



斎藤さんも居なくなっちゃう…


嫌だ…

嫌だよ…

一人にしないで…


「斎藤さんっ」


「斎藤さん…斎藤さん」


突然叫び始めた楠葉に平助達は戸惑いを隠せない


その様子はまるで親鳥に見放された雛鳥のように絶望に満ち溢れ必死に生きようとしているようだった



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