漆黒の黒般若
部屋には土方さんもいた


あの夜の記憶がよみがえり楠葉はつい絡んだ視線をそらしてしまった



「今回は本当に楠葉君には悪いことをしてしまった。
私たちを許してほしいとは言わない。しかしどうかこの壬生浪士組のことは恨まないでくれ。今回この計画の首謀者は私だ。恨むなら私だけにしてくれ…」




そう言って頭を下げる近藤さんの言葉はとても近藤さんらしいと思った


近藤さんも芹沢さんをしたっていた1人だ
彼の死を好き好んで命令したのではないくらい楠葉にもわかっていた


その責任をすべて自分で被ろうとするところも近藤さんらしい


彼の前だと何故か心にひしめく濁りが晴れていく気がした


「それと、今日芹沢さんの部屋から出てきた。君にだよ…」


「えっ…?」


渡されたそれは手紙だった

まだ綺麗な白色を保ち、シワが少ないことから書いてからあまり日が経っていない事がうかがえる


紙の表には
“楠葉ちゃんへ”
と書かれており、お梅さんからの物だとすぐにわかった


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