漆黒の黒般若
「大丈夫か?」



震える指先を斎藤さんの手が包み込む


その温もりに少しだが安心する



「無理しなくていいんだぞ」


心配そうな顔で近藤さんも楠葉に声をかける


「大丈夫です…。あたしもちゃんと現実を見なくちゃですね…」


そう言って少し笑う楠葉は手紙を開いた


皆が見守るなか楠葉は手紙に目を通す


その文はお梅さんの過酷な過去からは想像できないほど幸せに道溢れていた


そしてその文は1つの事実が書かれていた


お梅さんは自分が暗殺されることを知っていた…


頬には止めどなく涙が流れ続ける


「お梅さん…」


文を読み終わった楠葉の顔はすっきりしていたように思える


「近藤さん、文を渡してくれてありがとうございました。それと、これからもここに居させてもらってもいいですか…?」


改まり頭を下げる楠葉にその場にいた人達は驚きながらも微笑んだ


「あぁ、ずっとずっとここにいなさい。もうここは楠葉君の居場所なんだよ」


近藤さんは太陽のような人だ

壬生浪士組という地上を照らし続ける太陽


しかし太陽が沈み隠れているところで存在しなくてはならないのが月だ


芹沢さんは月のような人だ

裏で壬生浪士組を支えるなくてはならない暗い影


月がいなくなった今

太陽にかかる負担も増えるだろう

しかしここには太陽を支える人達がたくさんいる


そしてあたしも彼を支える1人になりたい


そう強く思った





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