漆黒の黒般若
「うーん、そういえば後ろの髪も邪魔なんだったな。いっそのこと後ろも切ってしまおうか」


「後ろはだめですよっ!あたしの仕事がなくなっちゃうじゃないですか」


「そうだったな、では前髪を少しは切ってくれ」



「はい」


とりあえず、斎藤さんに座ってもらってはさみで長さをちまちま切っていく


この時代のはさみは糸切りばさみのような形なので切りにくい


チョキンと音がするたびに畳に敷いた髪の上には斎藤さんの髪がおちていく


斎藤さんは猫っ毛のためあまり切ると癖がついて大変だと思ってあまり切らなかった



「できましたよ」


顔にかかった髪の毛をはらってあげると長い睫毛が少しは揺れる


「坂下、くすぐったい」


「わぁ、はいっ!すみません」


ついつい斎藤に見とれていた楠葉は正気に戻りてきぱきと残りの髪をはらう


「お待たせしました」


「ん、どうだ?」


「いや、我ながらうまく出来たと…」


「そうか、ありがとう」


そういうと斎藤さんは鏡も見ずに立ち上がる


「坂下、髪が伸びたらまた切ってくれ。頼むぞ」


「はいっ」


こうして楠葉の数少ない仕事はまた1つ増えたのであった


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