漆黒の黒般若
沖田さんから教えてもらった突きも虚しく刀を振り払われた楠葉は畳に押し付けられた



手首を捕まれた楠葉は足をばたつかせるが太ももに付けられた傷が痛む


「は…なせっ!」


「おお、元気のよいことだ。だがこの光景には覚えがあるぞ。いつだったか…」


ニヤリと笑う吉田に楠葉は青ざめる


「いやっ…、やめて言わないで!やめてっ!!」


しかし吉田は口を閉じない

「坂下っ!」



心配した斎藤が楠葉の名前を呼ぶ



「おう?楠葉、お前あの男が好きなのか?まだ話してないんだな、俺たちのことを…?想い人に秘密はよくないな…。俺が直々に話してやろう」



「秘密…?」



「やめてっ!言わないでっ!!いやぁっ」


泣き叫ぶ楠葉を後目に吉田は顔だけ斎藤の方を向くといやらしく笑った口を動かす



「楠葉の想い人よ、よく聞くがいい。俺はこいつを抱いたことがある。こいつはいい鳴き声で鳴くぞ?あの怯えた表情なんて今思い出しただけでも……ぐはっ」


涙でぼやけた視界の中、満えんの笑みで笑っていた吉田の口からは一瞬にして真っ赤な血があふれでた



吉田が倒れたその後ろには刀を赤く染めた斎藤さんが立っていた



「俺の大事な小姓をぐろうする奴は許さんぞ…」


その表情は暗闇と涙でよく見えなかったがかなり怒っているように思えた



< 249 / 393 >

この作品をシェア

pagetop