漆黒の黒般若
どうして…


どうして…


どうして…



祐の顔と声をもつ楠 小十郎と名乗る男は笑いもせずにただ試合が終わるのを黙って見ている



裕なの?



あたしのこと気づいてくれないの?



混乱するにつれ頭がぼーっとしてくる


こっち向いてよ、裕


あたしはここなんだよ



「おい、楠葉どうしたんだ?」


隣にいた永倉が楠葉の異変に気づいて声をかける


「裕が…」


ドスッ


「おいっ、楠葉!おい、しっかりしろ!!」


暑さでやられたのか楠葉はその場に崩れ落ちる


意識を失った楠葉の目にはうっすらと涙がにじんでいた



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