漆黒の黒般若
「ケホッ、ゲホッゲホッ…」




自分の咳で目が覚めてしまった



最近は咳のせいで寝てもすぐに目が覚めてしまう



くまが濃くなり、腕も細くなった気がする



このまま僕はあの世に旅立ってしまうのだろうか…



胸には早く楽になりたい気持ちとそれでは勿体ないという気持ちが渦巻いてなんだかわからないものになっていた



ふと、横に寝返りをうつと楠葉ちゃんが寝ていた



その寝顔は眉間にシワを寄せてなんだか険しい



あーぁ、今からそんなにシワ寄せてるとおばあちゃんになったときにシワになっちゃうよ?



僕は思わずそのシワがたまる眉間を突っついた



「ぅ、うーん…」



おっといけない


起こしちゃうな


仕方がないからしばらくこうして彼女の寝顔を眺めているとしよう


どうせ一くんが帰ってきたら彼女は僕よりも彼の方に気がいってしまうだろう



だから今だけは楠葉ちゃんを独り占めさせてね、一くん




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