漆黒の黒般若
お信さんとはあれからというもの外出の許可が出る度にちょくちょく会っていた


と言っても忙しい幹部の人達にいつまでも付き添いに付き合わせることは出来ず、いつもゆっくり話しておいでと言われながらも楠葉から気を使ってしまうのだ


「今日の付き添い人は入ってこないの?」



「いや、今日は土方さんっていう人で、彼は副長をつとめてくれているんですけど、とぉっても怖いんですよ。だから多分入っては来ないですね」



「ふーん、そうなんだ。でも付き添い引き受けてくれるってことは根はいい人なんじゃないかしら?」


「そうなんですよね…。あたしも最近そう思います」


「まってよ、土方?その人の名前って歳三さんっていわない?」



「へっ?そうですけど、お知り合いだったんですか?」


楠葉はお信さんが土方さんのことを知っていたことに驚く


「あぁ、ちょっとね…。それより楠葉ちゃん今日はなに食べる?」



「えっと、じゃあみたらし団子で」


なんとなく話をはぐらかされながらもお信さんとの楽しい一時を壊したくなくてそこにあえて突っ込むことはやめた



「楠葉ちゃん、みたらし団子すきだね〜。あたしは甘いものがあまり好きじゃないからそんなに美味しそうに食べてる楠葉ちゃんが少し羨ましいわ」



「えっ?!お信さん甘いもの苦手なんですか!なのにいつも甘味屋を待ち合わせ場所にしちゃって…。すみません…あたし、気がつかなくて」




落ち込む楠葉を見てお信は慌てた


「ごめんなさいっ。そういう意味じゃなかったんだけど…。別に気になんてしてないから!本当よ?」



「でも…」



「いいの、あたしは楠葉ちゃんが美味しそうにみたらし団子食べてるのを見てるのがすきなのよ。だから楠葉ちゃん、あたしの楽しみを奪わないでよね?」



そう言って楽しそうに話すお信さんを見て少しお梅さんの面影を感じた



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