漆黒の黒般若
「また独りですか?」


「あ、山南さん。そうなんです。皆さん忙しいみたいで…」


「まぁ、最近は隊士も増えて大変ですからね」


「だから邪魔にならないようにいい子にしてるんです…」


「そうですか。偉いですよ。じゃあ、私も邪魔にならないようにいい子にしていなくてはですね」



そう言うと山南さんはあたしの横に腰かける


心なしかその横顔は少し寂しそうだった


「そんなことないですよっ。山南さんは頭もよくて博識でここだけの話新撰組の中で一番常識人ですよ」


最後のところは少し小声で言ってみた


「ふはっ。楠葉さんは面白いですね。明里が可愛がるのもわかりますよ」


「へっ?あたしってそんなにアホっぽいですかね…」

なんだか山南さんにアホっぽいところを見せてしまって恥ずかしくなってきた


うつむき加減で落ち込む楠葉を見て山南さんはまた笑った


「私は少々アホっぽい人の方がすきですよ?ほら、明里も結構そういったところがあるでしょう?私に欠けている明るさを感じますよ」


「山南さんも十分明るいですよ?でもお信さんと2人で1つっていうのはあながち間違ってないと思いますよ」



「それも…そうですね。私は今まで頼られる側だったんですが案外私が頼っていたのかもしれません」


「でもきっとそういった夫婦がいい夫婦と呼ばれるようになるんですね」


「いい夫婦ですか…」


「そういえば最近お信さんとどうなんですか?まぁでも聞くまでも無いですよね。2人は常に仲良いですもんね?」


こんなことを聞いてまた得意のおのろけが始まると思っていたが意外にも山南さんの顔は寂しそうだった


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