漆黒の黒般若
「どうかしたんですか…?」


「いえ、なんでもないです。明里とはいつも通りですよ」


「そうですか。よかったです。こないだ会ったときお信さんも元気なかったので…」


「あぁ、元気なかったですか…。いつも楠葉さんに会うときは元気いっぱいなんですけどね。どうしたんでしょう…?」


「山南さんは何か言われてないんですか?」


「さて、この間ここへ来たときは何も言っていませんでしたが今考えてみると心なしか元気がなかったように思えてきました」


「山南さんにも相談出来ないだなんて…、一体どうしたんでしょうか…?どうしよう…なんだかとても心配になってきました…っ」


心配そうな顔でおろおろする楠葉の肩にポンと手が置かれた


「大丈夫でしょう。楠葉さんと居たときや私の前での態度はきっと腹でも痛かったか誰かと喧嘩でもしたのでしょう。それに相談ごとがあれば私や楠葉さんにそのうち話して来ますよ。明里はそういう女ですから…」


「っふは。そうですね…。お信さんはそういう人でした。いつも明るくて周りも一気に明るくしちゃうんですよ。さすがですね、山南さん」


「明里は単純ですからね」


「そうですね、でもそこがお信さんのいいところっていうかなんというか…」



「彼女は私に足りないものをもっていて、そして自分でも知らず知らずのうちに補ってくれている。もう明里なしでは生きていけない気がしますよ」



「ごちそうさまです」


山南さんのおのろけ話を聞いて、やっといつもの山南さんらしくなったと楠葉はほっとした


こうして山南さんと話すのは何回目になるだろう


この屯所に来たときから黒般若だったあたしにも山南さんは優しかった



周りをすべて敵視していたあたしにニコニコしながらお茶をすすめてくる山南さんにはかなり助けられた



話を聞いてもらう


そんな事だけだったがあたしの肩の荷は少しずつ降りていったことは事実だった


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