漆黒の黒般若
バタバタバタバタ



向こうから廊下を走る音が聞こえた



「山南さんっ。ちょっといいか?」


足音の正体は平助くんで寒いのに少し汗をかきながら息をきらしている


きっと山南さんを探し回ったのだろう


山南さんの部屋から斎藤さんの部屋がある離れまでは随分と距離がある


そこを全速力で走ったのでは汗をかいてもおかしくないな


そんなことをぼーっと考えていると山南さんが笑いながら振り返った


「どうやら仕事ができたようです。なんだか楠葉さんを裏切るような感じはしますが許してくださいね」


「いえ、山南さんはたくさん必要とされているんですからまた忙しくなりますよ。あたしのことは気にせず行ってください」


平助くんは何の話?といいながら首を傾げていたが山南さんが歩き始めると後をついていき始めた


「あ、それから楠葉さん。すくなくとも私はあなたのことが必要ですよ。だからいつでも此処に居て話を聞かせてくださいね」


にっこり笑って手を降る山南さんの優しさがまた身に染みた


「はいっ」


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