漆黒の黒般若
「…さん?」
「山南さん。山南さんったら!山南さんっ!!」
その声で我にかえった私は隣で心配そうにこちらを見上げる頭を撫であげた
「大丈夫です。すみません、少し考えごとを…」
そう言ってまた、チラリと島原のある方角に目を移した
「そうなんですか…。なんか山南さんの悩みごとはスケールが大きそうですね」
「っはは。まぁそんなことないですけどね…。そんなに深刻でもないですし、悩みごとにスケールの大きいも小さいもありませんよ」
「やっぱり返答の仕方も大人っぽいですね!さすが山南さん」
彼女が何故感動しているのかよくわからなかったがこんなことにもすぐ笑顔になる楠葉さんを見ているのは好きだった
「最近、お信さん忙しそうですね。山南さんのところにも来てないんですよね?」
そう言って楠葉は寂しそうに眉を寄せる
「本当はここへは来てはいけないですからね、明里は…。内緒にしていても次期にバレます。島原のようなああいう世界はたいそう厳しいみたいですからね」
「じゃあ、やっぱりあたしはお信さんに会わない方がいいのかもしれませんね…」
「いえ、逆にそれは明里が悲しむでしょう。私は遊廓でも会えますが楠葉さんと会うのは明里にとっても新鮮で楽しみにしてるんです」
「新鮮…?」
「明里に聞いてませんか?明里は生まれは江戸で、売られてからはずっと島原暮らしです」
「え、じゃあ…」
「はい。外に出ることも出来ずにずっと島原で暮らして来たんです」
「この時代では、よくあることなんですか…?」
明里のことを思ってか、少し苦痛の色を浮かべながら楠葉はうつむく
しかし山南はもう一度島原の方を眺めると話を続けた
「そうですね…。まぁ、あれだけの遊女が居ればよくある。と言った方が正しいのかもしれません。しかし明里は元々江戸の“吉原”という島原とは別の遊廓で暮らしていて、金に困った親が売り飛ばしたそうなので、そういった話は珍しいかもしれませんね」
「売った…?親が?子を?そんなのって…あんまりじゃ…っ」
そう言った楠葉の頭にはまだ両親が生きていた頃の楽しかった生活が甦っていた
親というもの
家族というものは皆自分達と同じようなものだと思っていた
「楠葉さんが暮らしていた未来ではそういったことはあまりないかもしれません。いや、この幕末の世でも基本的に親が子を売り飛ばすことはあまりありません。しかし、明里の住む世界ではそれは珍しいことではないんですよ」
お信さんは、いつも明るくて、にこにこしてて、優しくて
とてもそんな過去があったとは思えなかった
しかし、それと同時にそんな過去を乗り越えて来た彼女に感動を覚えたのも事実だった
「山南さん、あたし…。お信さんに会いたいです。会ってちゃんと本人の口からその話を聞きたい。だからあたしを島原に連れていってくれませんか?」
楠葉が突然だした提案に山南は眉をひそめた
「しかし楠葉さん。あそこは基本おなごは立入禁止ですよ?あなたがもし女だとバレたら…。あなたに危険なマネはさせられませんよ」
「でも、いつもお信さんはあたしに会うために危険をおかして抜け出してきてくれている。今回はあたしが会いたいんです。そんなことでわざわざお信さんに危険なマネはさせられませんよ。だからあたしからお信さんに会いに行きます」
ジッとこちらを見ながら言いきった楠葉に山南はため息をつく
「あなたは筋金入りの頑固ですからねぇ。どうせ駄目だと言っても一人でいくのでしょう。それなら私が付き添いますよ」
「山南さん。山南さんったら!山南さんっ!!」
その声で我にかえった私は隣で心配そうにこちらを見上げる頭を撫であげた
「大丈夫です。すみません、少し考えごとを…」
そう言ってまた、チラリと島原のある方角に目を移した
「そうなんですか…。なんか山南さんの悩みごとはスケールが大きそうですね」
「っはは。まぁそんなことないですけどね…。そんなに深刻でもないですし、悩みごとにスケールの大きいも小さいもありませんよ」
「やっぱり返答の仕方も大人っぽいですね!さすが山南さん」
彼女が何故感動しているのかよくわからなかったがこんなことにもすぐ笑顔になる楠葉さんを見ているのは好きだった
「最近、お信さん忙しそうですね。山南さんのところにも来てないんですよね?」
そう言って楠葉は寂しそうに眉を寄せる
「本当はここへは来てはいけないですからね、明里は…。内緒にしていても次期にバレます。島原のようなああいう世界はたいそう厳しいみたいですからね」
「じゃあ、やっぱりあたしはお信さんに会わない方がいいのかもしれませんね…」
「いえ、逆にそれは明里が悲しむでしょう。私は遊廓でも会えますが楠葉さんと会うのは明里にとっても新鮮で楽しみにしてるんです」
「新鮮…?」
「明里に聞いてませんか?明里は生まれは江戸で、売られてからはずっと島原暮らしです」
「え、じゃあ…」
「はい。外に出ることも出来ずにずっと島原で暮らして来たんです」
「この時代では、よくあることなんですか…?」
明里のことを思ってか、少し苦痛の色を浮かべながら楠葉はうつむく
しかし山南はもう一度島原の方を眺めると話を続けた
「そうですね…。まぁ、あれだけの遊女が居ればよくある。と言った方が正しいのかもしれません。しかし明里は元々江戸の“吉原”という島原とは別の遊廓で暮らしていて、金に困った親が売り飛ばしたそうなので、そういった話は珍しいかもしれませんね」
「売った…?親が?子を?そんなのって…あんまりじゃ…っ」
そう言った楠葉の頭にはまだ両親が生きていた頃の楽しかった生活が甦っていた
親というもの
家族というものは皆自分達と同じようなものだと思っていた
「楠葉さんが暮らしていた未来ではそういったことはあまりないかもしれません。いや、この幕末の世でも基本的に親が子を売り飛ばすことはあまりありません。しかし、明里の住む世界ではそれは珍しいことではないんですよ」
お信さんは、いつも明るくて、にこにこしてて、優しくて
とてもそんな過去があったとは思えなかった
しかし、それと同時にそんな過去を乗り越えて来た彼女に感動を覚えたのも事実だった
「山南さん、あたし…。お信さんに会いたいです。会ってちゃんと本人の口からその話を聞きたい。だからあたしを島原に連れていってくれませんか?」
楠葉が突然だした提案に山南は眉をひそめた
「しかし楠葉さん。あそこは基本おなごは立入禁止ですよ?あなたがもし女だとバレたら…。あなたに危険なマネはさせられませんよ」
「でも、いつもお信さんはあたしに会うために危険をおかして抜け出してきてくれている。今回はあたしが会いたいんです。そんなことでわざわざお信さんに危険なマネはさせられませんよ。だからあたしからお信さんに会いに行きます」
ジッとこちらを見ながら言いきった楠葉に山南はため息をつく
「あなたは筋金入りの頑固ですからねぇ。どうせ駄目だと言っても一人でいくのでしょう。それなら私が付き添いますよ」