漆黒の黒般若
目が覚めた娘は集まった幹部達に怯むことなく
その場でただうつ向いている
その目は死んだように生を感じられず
その身体からは感情が抜け落ちているようだった
そんな彼女を俺はとても哀れに思う
ふつう、この歳の娘達は色恋事や流行の着物などに目をきらきらさせ人生の華、真っ只中なはず
しかしこの娘生きた屍のように世界を拒絶しているようにみえる
一体何が彼女をこんなにまで追い込んでしまったのか俺は知りたかった
そのうち幹部もすべて集まり全員が彼女に注目する
山南さんが彼女に自分のことを話すよう促したが帰ってきた言葉は
「あたしの名前は坂下楠葉です。名前以外にあなたたちに話すことはありません」
怖いものをしらないように、にこやかに笑う彼女に土方さんが黙っているわけがなく
「ふざけるなっ…!おい、こいつを蔵にいれろ」
かなりご立腹の様子
しかし熱のあるこの娘を蔵なんかにいれておけばすぐに死んでしまうだろう
いつもはそんなことなど気にしないのだが何故かとても不安な気持ちになる
蔵に連れていかれる娘はふらついているものやはり恐怖など微塵も感じてない様子だった
その横顔が逆に俺の不安を煽る
解散となった部屋から出た俺はこっそり蔵へと向かった
警備などしていない蔵の窓の方に回り込み中の様子を伺う
すると中では彼女が倒れこんでいた
あわてて副長に伝えようと走り出した俺の耳になにか声が聞こえる
それは楠葉の声だった
泣いているのかと思い扉に聞き耳をたてる
「だしてっ…」
か細いがそれは生きようとしている声だった
「だしてっ!ここからだしてー!」
だんだんと声も大きくなってゆく
我慢できなくなった俺はつい扉を開けてしまった
その瞬間
「あたし…、生きたい!」
驚く俺の胸で娘はまた意識を失ってしまった
「副長になんて話せばいいのだろうか…」
今更彼女を蔵に押し込む訳にもいかず項垂れる
しかし、今度こそ目覚めた時には話を聞けそうだと思う斎藤であった…
その場でただうつ向いている
その目は死んだように生を感じられず
その身体からは感情が抜け落ちているようだった
そんな彼女を俺はとても哀れに思う
ふつう、この歳の娘達は色恋事や流行の着物などに目をきらきらさせ人生の華、真っ只中なはず
しかしこの娘生きた屍のように世界を拒絶しているようにみえる
一体何が彼女をこんなにまで追い込んでしまったのか俺は知りたかった
そのうち幹部もすべて集まり全員が彼女に注目する
山南さんが彼女に自分のことを話すよう促したが帰ってきた言葉は
「あたしの名前は坂下楠葉です。名前以外にあなたたちに話すことはありません」
怖いものをしらないように、にこやかに笑う彼女に土方さんが黙っているわけがなく
「ふざけるなっ…!おい、こいつを蔵にいれろ」
かなりご立腹の様子
しかし熱のあるこの娘を蔵なんかにいれておけばすぐに死んでしまうだろう
いつもはそんなことなど気にしないのだが何故かとても不安な気持ちになる
蔵に連れていかれる娘はふらついているものやはり恐怖など微塵も感じてない様子だった
その横顔が逆に俺の不安を煽る
解散となった部屋から出た俺はこっそり蔵へと向かった
警備などしていない蔵の窓の方に回り込み中の様子を伺う
すると中では彼女が倒れこんでいた
あわてて副長に伝えようと走り出した俺の耳になにか声が聞こえる
それは楠葉の声だった
泣いているのかと思い扉に聞き耳をたてる
「だしてっ…」
か細いがそれは生きようとしている声だった
「だしてっ!ここからだしてー!」
だんだんと声も大きくなってゆく
我慢できなくなった俺はつい扉を開けてしまった
その瞬間
「あたし…、生きたい!」
驚く俺の胸で娘はまた意識を失ってしまった
「副長になんて話せばいいのだろうか…」
今更彼女を蔵に押し込む訳にもいかず項垂れる
しかし、今度こそ目覚めた時には話を聞けそうだと思う斎藤であった…