漆黒の黒般若
「楠〜葉っ!」

後ろから驚かせようと
そっと近づいて楠葉の肩を軽く叩いた


「ひゃっ」

ビクッとはねた彼女は驚いた顔で振り向いたがすぐに笑顔になった


あ…
まただ

俺はどうしたらこいつに本当の笑顔をさせてあげられるんだろう


楠葉のつくった笑顔はなんだか切なそうだ

彼女はきっと上手く笑えていると思っているのだろう

にこにこしながら俺の足を叩いてくる


「もぅ、藤堂さん。脅かさないでくださいよ!心臓が止まっちゃうかとおもいましたよ〜」

「悪い悪いっ」


嘘笑いを注意することなど出来ず
俺は楠葉につられて笑う


「あのさっ、俺のことは平助でいいよ?藤堂さんはよそよそしすぎだって、あと敬語もなし!いいな?」


「えっ?あ、うん。じゃあ平助くん…?」


この時、戸惑いながらも嬉しそうな楠葉にキュンとしたのは俺だけの秘密だ


「うん、じゃあ改めてよろしくな!楠葉っ」



「うん」



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