漆黒の黒般若
「楠葉〜。準備できたかぁ〜?」


ガラッ

部屋にいくと楠葉は待ちくたびれたように座って待っていた


それほど暇だったのだろう

「もぅ、待ちくたびれたよ〜。早く行こっ」


「あいよっ」


そう言うと俺は屯所をでて町に向かう


楠葉は町をじっくり見たことがないらしく
目を輝かせながらキョロキョロと辺りをみわたしている


「平助君は何か買うものでもあるの?」

そう言って楠葉がこちらを振り向いた瞬間


「きゃーっ」


町に悲鳴が響き渡った

「よし、行くぞ」

巡回ではなかったが京の平和を守るのが新撰組の役目だ

平助は悲鳴のする方に走り出した

楠葉もあとを追う

しばらく走ると悲鳴が聞こえたであろう団子屋に浪士達が抜いた刀をちらつかせたっていた


「おい、お前は俺達武士を愚弄すると言うのか!許せぬ。そこになおれ!」

怒鳴る男の着物の裾が濡れている

きっと怒鳴られている女の子がこぼしてしまったのだろう

顔を真っ青にして
目には涙が浮かぶ

そんな彼女に浪士は怒りですぐにでも切り殺そうと刀を向けている


「やめろっ」

俺が叫ぶと視線が集まった

浪士は構えていた刀をこちらに向け俺達を睨み付ける

「なんだ、お前は!ガキはひっこんでろ」


平助の容姿を見て怒鳴ってきた男はこちらに向かって襲ってくる


「うらぁーっ!」


血走った目で降り下ろされた刀を受ける


「このガキ…!こざかしいやつだ。長州で鍛えたこの剣術、お前のようなガキにおとりはせん!」

ぐっと一気に力を込められた平助は押し負けそうだった



その時、さきほど向こう側にいた浪士が刀を構えてきた


「くっそ、あいつも仲間だったのか…」


そして、その男が狙ったのは俺じゃなくて

その隣にいた楠葉だった



「楠葉、逃げろっ!」

早く彼女を逃がさなかったことを後悔する


助けに行きたいのだが目の前の浪士は腕がたつらしく、なかなか倒すことが出来ない


刀を向けた男はもう楠葉の目の前にまできていて
横目に刀を降り下ろすのが見えた


「楠葉ーっ!」

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