漆黒の黒般若
部屋にいくと坂下がいなかった


小首を傾げながら部屋の前にたっている斎藤に土方が近づく

「楠葉なら平助と町にいったぞ」

「町…」


久々に暇ができ
楠葉の相手でもしようと思っていた斎藤は少し落ち込む


「それより斎藤、まだ幹部にはいってねぇんだが商人の古高俊太郎がどうやら長州の間者らしい。しかも最近長州の奴等が京の町に集まってきているらしい…。理由はわからねぇが古高が長州の間者ということがはっきりし次第やつを捕まえる」


「わかりました。巡回の時も古高の店に目を光らせます」


「あぁ、頼んだぞ。斎藤」

そう言うと副長は部屋を後にした


最近、巡回中も長州の浪士がよく目につく

長州は何を考えてるのだ…

土方の話しについて考えていると




ガラッ


玄関の戸が開く音がした

平助と坂下なのか…?
に、しては帰りがやけに早いな


嫌な予感がした俺は玄関の方に向かう


すると、向こう側から坂下が歩いて来るのが見える

やはりな

と思って声をかけようとした斎藤は彼女の異変に気がついた


うつ向いた彼女の着物には血が付いている

坂下のかと思って心配したのだが

その血はどう見ても反り血だった


坂下が、人を斬ったのか?

しかし町には平助も同行したはず

なにかあったのだろう

楠葉はぼーっと
歩いてくる


声をかけようと廊下のすみで立ち止まるが彼女は斎藤に気づくことなく横を通りすぎていった


坂下の後ろ姿はいつもより小さい気がする


俺は直ぐに平助のもとに向かった



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