漆黒の黒般若

「あんたはなぜそんなに無理をする？何をそんなに恐れているんだ？

信じてほしいなんて言わない

だからせめて…
もっと自分を大切にしてくれ…

自分自身を傷付けないでくれ…」


怒りが手助けし思っていたことが次々と溢れだす


坂下は暗い顔をしていたがいつもは冷静な斎藤が怒りを露にしてきたので困ったように笑った


まだ言いたいことがありそうな斎藤だがなんとか冷静さを取り戻し
楠葉をじっと見つめている

「ありがとうございます…。なんだかいつも斎藤さんに助けてもらっていますね
あたし、吉田が憎いです

幼なじみを殺されて
あげくのはてに…」

そこで言葉につまる楠葉はうつ向く


「あたしは、彼を殺すためなら死んでもいいと思ってます。
あたしはもう
１度死んだようなものですから…

とにかく彼を殺すまではなんとしてでも生きます


あたしを傷付けても

なんとしてでもあいつを見つけ出す

それがあたしの今の生きる理由だから…」


そう言うと坂下はにっこり笑った


今度は本物の笑顔だった


そんな彼女を見て
それ以上なにも言えなくなってしまった


彼女はきっと吉田を相討ちになったてしても殺すだろう

静かに部屋を出ていく彼女の悲しそうな横顔が目に焼き付いて当分のあいだ離れなかった