漆黒の黒般若
しばらくして部屋に戻ったが斎藤さんは居なかった
がらんとした部屋は暗く
まるであたしの心情のようだ
「斎藤なら副長に呼ばれていたぜ」
急にかけられた声に驚いて後ろを振りかえる
「永倉さん…」
よっ
と言って手をあげた永倉さんはにこにこしながら立っていた
「土方さんですか…?」
「ん、あぁ
さっき平助と一緒に部屋に入ってくとこ見たからなっ」
「そうですか、ありがとうございます」
「そう言えば今日平助と町行ってきたんだろ?
楽しかったか?」
「へっ?」
町の事を聞かれて戸惑うあたしに何を勘違いしたのか永倉さんはにやにやしながら何かを考えているようだ
「さては、なんかあったなぁ〜。平助の野郎楠葉と何かあったんなら俺と佐ノに報告しなくちゃだろ〜?
にしても
お若い2人は熱いね〜。
見てるこっちがのぼせちまうぜ。
いいか、屯所内ではイチャつき禁止だからなっ!
佐ノ〜」
「へっ?ちょっ、ちょっと永倉さん!待ってください。何かの勘違いですよ?!」
訳のわからない勘違いをされて必死で誤解を解こうとするのだが
永倉さんはダッシュで廊下を走っていってしまった
「はぁ…」
追うのを諦めて
縁側に腰をかける
それにしても平助君永倉さん達に町の事言わないでくれたんだ
てっきり永倉さんはその事について話しかけてきたのかと思った
正直、町での一件は広まってほしくなかった
多分それは
あの人達に嫌われたくなかったから
恐れられたくなかったからなんだと思う
この1年孤独に生きてきた楠葉にとって久々に信じたいと思える人達だった
しかし、その気持ちは吉田を殺すという目標の妨げにしかならないだろう
吉田を殺すことが
楠葉にとって先決だった
でも、やはり最近揺らぎ始めているものがあることに自分でも薄々気が付いていた
町で浪士を斬ったときも
久々に握った刀とためらいなく相手を切り裂く自分に戸惑いを感じた
ちょっと前までは殺してしまっても自分の成し遂げなくてはならないことを考え躊躇う気持ちは割りきっていた
しかし、ここに来てから久々に感じる温かみと心から笑える幸せに浸ってしまい気持ちが割りきれなくなってきていた
あたしも弱いなぁ…
自分の弱さに笑みがこぼれる
がらんとした部屋は暗く
まるであたしの心情のようだ
「斎藤なら副長に呼ばれていたぜ」
急にかけられた声に驚いて後ろを振りかえる
「永倉さん…」
よっ
と言って手をあげた永倉さんはにこにこしながら立っていた
「土方さんですか…?」
「ん、あぁ
さっき平助と一緒に部屋に入ってくとこ見たからなっ」
「そうですか、ありがとうございます」
「そう言えば今日平助と町行ってきたんだろ?
楽しかったか?」
「へっ?」
町の事を聞かれて戸惑うあたしに何を勘違いしたのか永倉さんはにやにやしながら何かを考えているようだ
「さては、なんかあったなぁ〜。平助の野郎楠葉と何かあったんなら俺と佐ノに報告しなくちゃだろ〜?
にしても
お若い2人は熱いね〜。
見てるこっちがのぼせちまうぜ。
いいか、屯所内ではイチャつき禁止だからなっ!
佐ノ〜」
「へっ?ちょっ、ちょっと永倉さん!待ってください。何かの勘違いですよ?!」
訳のわからない勘違いをされて必死で誤解を解こうとするのだが
永倉さんはダッシュで廊下を走っていってしまった
「はぁ…」
追うのを諦めて
縁側に腰をかける
それにしても平助君永倉さん達に町の事言わないでくれたんだ
てっきり永倉さんはその事について話しかけてきたのかと思った
正直、町での一件は広まってほしくなかった
多分それは
あの人達に嫌われたくなかったから
恐れられたくなかったからなんだと思う
この1年孤独に生きてきた楠葉にとって久々に信じたいと思える人達だった
しかし、その気持ちは吉田を殺すという目標の妨げにしかならないだろう
吉田を殺すことが
楠葉にとって先決だった
でも、やはり最近揺らぎ始めているものがあることに自分でも薄々気が付いていた
町で浪士を斬ったときも
久々に握った刀とためらいなく相手を切り裂く自分に戸惑いを感じた
ちょっと前までは殺してしまっても自分の成し遂げなくてはならないことを考え躊躇う気持ちは割りきっていた
しかし、ここに来てから久々に感じる温かみと心から笑える幸せに浸ってしまい気持ちが割りきれなくなってきていた
あたしも弱いなぁ…
自分の弱さに笑みがこぼれる