漆黒の黒般若
低く唸るような芹沢の声にその場の空気がピンとはりつめる


そんな斎藤が言葉を発した

「おそれ多くもこの娘はまだここに来たばかりで芹沢局長にご無礼を働く可能性も考え我々が参った次第です」

丁寧な言葉ながらも堂々と話す斎藤に芹沢もやむおえず斎藤と総司の入室を許可した


「っで、お話というのは…」


さっさとこの部屋から去りたい楠葉は事の本題に入ろうとする


「あぁ、それはお前を呼び出す只の口実だ

ただ酌をしろといってもどうせ試衛館のやつらはお前を寄越しはしないだろう?
俺もバカじゃねぇんだ
そのくらいわかる」


そういった芹沢はケラケラおかしそうに笑う



「騙したんですか?」

真剣な顔つきで聞いてくる楠葉に近づき、クイッと顎を持ち上げた

その瞬間斎藤と総司は警戒の色をうかべる


「騙したなんて人聞きの悪い。俺はただお前が気に入ったのだ。理由はそれではだめなのか?」


にたにた笑う芹沢の顔を楠葉は一心ににらみ続ける


「お前…

黒般若だろう」





その言葉に芹沢以外の3人は目を見開く


「どうして…」


呟いた総司の言葉に芹沢は鼻で笑う


「ふんっ。少し前に俺の下の者が黒般若に殺られたからな。その時俺は黒般若を見かけたんだよ。
あの時の殺気…

お前と初めて屯所で会った時と同じだった

ゾクゾクするぜ
黒般若さんよ」

そういって芹沢は酒臭い顔を近づけてくる


「やめてっ!」


顔を払おうとするがその手を芹沢が掴む


「おっと…

もうひっかかられねぇぜ
すぐ手がでるところも
そのきの強そうな目付きも俺好みだ」


どんどん近づいてくる芹沢を総司が止めようとするが芹沢は近くにあった刀を彼に向ける

「お前らは出ていけ。邪魔だ。何をもたもたとしている、これは局長命令だぞ!」


命令と聞きたじろく総司の隣を誰かが通る


「いくら局長の命令でもこればかりは聞けません。どうかお手をおはなしください」


斎藤の申し出に立ち上がった芹沢はそのまま斎藤に近づいていく


斎藤の前まで来ると刀を首に突きつけ彼を睨む



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