漆黒の黒般若
急に現れた総司と楠葉に道場はざわめく


それもその筈、いつもサボって稽古に全くでない総司と斎藤の小姓であまり姿を現さない楠葉が突然竹刀を持って入ってきたのだから


「じゃあ、めんどくさいから1本始めにとった方が勝ちね?早く終わらせて添い寝してね〜」



「わかりました」


勝手に試合をしようとしている2人を誰かが止める


「おい、総司。なんでお前は楠葉をつれてきてんだよ?隊士達と接触するのはダメって土方さんもいってただろう?!」


「佐之さんは黙っててください。これはお昼寝の添い寝がかかってるんです!負けれないんですから」


「お昼寝の添い寝?なんだそりゃ?」

素振りをしていた永倉がいつのまにか総司の後ろから現れる


「楠葉ちゃんと僕で勝負して、僕が勝ったら楠葉ちゃんには何をしてもいいそうなんでいっちょ勝負しようと思って」


「楠葉と試合だと?そんなの土方さんにバレたら総司殺されるぞ?」


「でも、楠葉って強いんだろ?なら俺はこいつの腕前を見てみたい」


心配する原田をよそに永倉はけっこう乗り気だ


「誰か審判やってよ〜」


総司は周りにいた隊士達に向かって言う

「では、俺がやろう」


その人物に周りがまたざわめく。それもその筈名乗りをあげたのは土方だった


「ふ、副長!」
「土方さん!」


道場の扉の前で壁にもたれ掛かっていた土方は名乗りをあげて楠葉たちの方へ歩いてくる


「全く、久々に朝稽古に顔を出したらこの有り様か?一体何やってんだ、お前ら」


青筋をたてて怒鳴る土方に隊士達は青ざめている

原田や永倉も“まずい”と顔を歪ませる


土方の歩みは竹刀を握った楠葉と総司の前で止まった

「土方さんおはようございます」


睨み付ける土方に総司はいつもの調子で挨拶をする
その顔には余裕の笑みすら見せて


楠葉も早く総司を殺りたいので土方にビビってるひまはなかった


そんな2人の前で仁王立ちする土方は
はぁ、とため息をつくとキリッとした顔で言った


「お前ら、今日だけだぞ。勝負は1本とった方が勝ちでいいんだな?」


「土方さん!?」

「おいおい、いいのかよ」
周りがざわめく中、こうして一番組組長沖田総司 対 黒般若である楠葉の試合が幕を開けたのであった



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