俺だけの花嫁
「…出来るわけねぇだろ。昔のようになんて。」
気が付けば低く呟くように、吐き捨てるようそう言っていた。
昔のようになんて出来るわけがないんだ。
だって…
「お前は俺の母親になったんだから。」
「伊織…」
「親父と結婚して、莉奈まで産んで。急に俺の義母になって。なのに昔のように?」
ハハッと吐き出すように笑う。
「なれるもんならとっくになってるよっ。」
苛立ちをそのまま春香に向けてそう言った。
俺の気持ちを知っていたくせに、都合のいいことばかり言うなよ!
俺がどんな思いで…っ。
怒りを抑えるように唇を噛む。俺の言葉に春香は目を逸らす。
「ならせめて昌平さんとも仲良く…」
「出来ねぇよ。今更…」
出来る訳ない。
「伊織…」