俺だけの花嫁
春香は縋るように俺の腕を掴んだ。
小さな手で。
その手から熱が伝わる。
…どうせ親父の為なんだろう?
そんなに親父がいいのか?
小柄な春香を見下ろした
その手も目も唇も…心も…。俺に向くことは決してない。
「駄目っ、伊織!」
春香が驚いて俺から勢いよく離れた。
その姿にハッとする。
俺…今…春香にキスしようとした?
春香に思わずキスしようとしたのか。
自分自身の行動に驚いていた。
「いけないわ…。私たちは…」
諭すような言い方をする。
いけない…?
そう思っていたのは春香だけだった。
「俺は親子だなんて思ったことはない。俺はずっと春香のことが…!」